それは、仲のよかったM君の家へ遊びに行った時のことです。
彼の家は結構大きく自分の部屋も有り、当時6畳と3畳の借家に一家4人で暮らしていた僕にとってそれは羨ましい御殿のようでした。
そして、彼は”気に入っている曲があるので聴かせてやるよ”と「運命のレコード」に針を落としました。
ジョージ・ハリスンの「マイ・スイート・ロード」！
歌謡曲しか知らなかった僕にとってそのサウンドは衝撃でした。
プロデューサーのフィル・スペクターが作り出す”ウォール・オブ・サウンド”、ジョージの渋い声、いつ終わこともなく続く”ハレ・クリシュナ”のコーラス。
30年経った今でもこの時のショックを超えることはできませんし、そして、今後もないでしょう。
僕だけでなく、現在このページを見ているあなたにも、やはり運命の1曲があるのでしょうね。

　そのあと僕はM君にこの曲のについて根掘り葉掘り聞き始めました。
そして、彼の名は”ジョージ・ハリスン”、”元・ビートルズ”のメンバーであり、そのビートルズは2年前に
解散しており、メンバーはジョン･レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スター、
そして、レコード会社はアップルであると。さらにビートルズの有名な1曲”レット・イット・ビー”を聞かせ
てくれました。

　ビートルズ！、この名前をなぜか聞いたことがある。確か以前に週刊誌の広告欄で「ビートルズ解散
の真相」とかいう題名で目にしていた。勿論当時はそれが何を意味するのかわからなかったわけで
あるが。
さらに、”レット・イット・ビー”も聞いたことがあった。いつどこで聞いたのかわからないのだが、この
メロディーは耳に残っている。
そうか、ビートルズは歌手でメンバーは4人。なんかみんな怖そうな人たちだなーと”レット・イット・ビー”
のジャケットを見て思ったものだ。又、リンゴとアップルとは悪い冗談かとも思った。

　とにかく、その日に僕はレコード店へ行き「マイ･スイート･ロード」を買ったわけである。
そして、その日から来る日も来る日もターン･テーブルにこのシングルをかけ、レコードが擦り切れる
ほど聞いたのであった。
僕の日常はこの日からビートルズに捧げられ、彼らに関することは何にでも顔を出すようになる。
当然、少ないおこずかいはレコード購入にあてられ、夜はラジオのスイッチをひねり彼らの曲がかかる
のを聞き逃すまいのいつも耳をそばだてていた。

あれから30年の時が過ぎようとしているが、今でもビートルズに対する情熱は変わらない。
お気に入りの曲もどんどん変化するし、新しい情報にも相変わらず敏感だ。